採用市場が激化している今、せっかく魅力的な採用サイトを作っても、最後の「エントリーフォーム」で応募者が離脱しては意味がありません。実は、多くの企業がこのフォームの最適化を見落としており、本来なら出会えたはずの優秀な人材を逃してしまっています。
この記事では、明日からでも実践できる具体的な改善策をご紹介します。
採用サイトにおけるエントリーフォームの重要性
エントリーフォームは、応募者が企業と正式にコンタクトを取る第一歩です。ここで「面倒だな」「ちょっと不安…」と感じて離脱されると、文字どおり採用のチャンスを失います。
フォーム離脱の背景には様々な要因がありますが、多くの場合、「項目が多すぎる」「この会社にこれだけ個人情報を渡して大丈夫か?」という理由で、フォームの途中でやめてしまう応募者がたくさんいます。入力必須項目が多すぎると途中離脱されることは私も何度も目にしてきました。
こうしたデータからも、採用フォームでは項目や手順を必要最低限にし、応募者がストレスや不信感を抱かないようにすることが極めて重要だとわかります。
実際、世界的な調査では入力フォームの平均途中離脱率が約60%にのぼり、国内アンケートでも75.5%もの人が「フォーム入力中に離脱した経験がある」と回答しています。
参考:Study: Most Job Seekers Abandon Online Job Applications(調査:求職者の大半がオンラインでの求人応募を断念)
フォーム離脱がもたらす機会損失
フォームで離脱されることは、「応募してくれるはずだった人材を失う」ということです。運よく戻って来て再応募してもらえればいいのですが、多くの場合は二度と戻ってきません。こうなると、広告出稿にかけた費用やウェブサイト制作・運用コストが無駄になります。
私たちは制作業者として、離脱ポイントを分析するシーンによく立ち会います。すると、ほぼ必ずといっていいほど「フォームが煩雑すぎる」「エラー表示が不親切」という課題が浮上してきます。
エントリーフォームは最後のハードルでもあるからこそ、ここでの機会損失は採用全体の成果を大きく左右します。
応募者の心を掴むフォーム設計とは?
採用サイトは企業の顔ですが、その印象はフォームでも大きく変わります。応募者が「この企業、細かい配慮があるな」と感じれば、最後まで入力してくれる可能性が高まります。逆に、「なんだか雑だな」「めんどくさい」と思われたらあっという間に離脱します。
心理学では、「人は面倒なタスクほど後回しにしやすい」と言われます。
今すぐ効果が出る!エントリーフォーム改善3つの即効施策
私たちが制作現場で最初に提案するのが、この3つの施策です。劇的とまではいかなくても、フォームの完了率が上がったという事例が多々あります。
必須項目カットでシンプル化
フォームの項目数を見直し、本当に必要なものだけに絞り込みます。「最初から何でも聞いておけば後から楽」という採用側の気持ちは分かりますが、応募者視点では本当に面倒です。入力項目が増えるほど離脱リスクが高まるため、「名前・連絡先・希望職種」など最低限の情報のみをまず取得するのが重要です。
- 住所
- 生年月日
- 詳細な経歴
フォームで離脱したことがある人の54%が、入力項目が多かったことを理由に離脱したと回答する調査もあります。
モバイルファースト入力設計の秘訣
スマートフォンからの応募に最適化することも即効性の高い改善策です。2025年卒の新卒者向け調査では。スマホからエントリーフォームを開く人は約30%に達しており、もうPCで入力する人ばかりではなくなりました。
PC向けに作られたフォームをそのままスマホ向けに表示している場合、画面が小さく操作しにくいため多くのスマホユーザーが途中で離脱してまいます。
- 文字入力の種類に合わせて自動でキーボードを切り替える
- ボタンや入力枠は指でタップしやすい十分な大きさ
- 余白を確保しタップミスを防止
- フォントサイズを見やすく設定
エラーメッセージの改善
フォーム入力中のエラー対応を丁寧にし、ユーザーを迷わせない工夫も効果が出ます。
✕ 悪い例
「入力内容に不備があります」
どこを直せばいいのか不明で途方に暮れる
◯ 良い例
「電話番号には半角数字のみを入力してください」
具体的な指示で迷わせない
エラーが出たときに「入力内容に不備があります」だけ表示されると、応募者は「どこを直せばいいんだ?」と戸惑います。これではユーザーは途方に暮れてしまい、途中離脱の原因になります。
そこでおすすめなのが、エラー箇所を赤枠や警告アイコンなどでハイライトし、「電話番号には半角数字のみを入力してください」といった具体的な指示を出す方法。最近では入力ミスをリアルタイム検知し即座に知らせてくれる入力支援機能も登場しています。住所入力の自動補完やフォーマット自動変換などを導入すれば、ユーザーの手間が減りストレス軽減につながり離脱を防止します。
- エラー箇所を赤枠や警告アイコンでハイライト
- 入力ミスをリアルタイム検知し即座に知らせる
- 住所入力の自動補完機能
- フォーマット自動変換機能
求職者のストレスを減らすフォーム最適化戦略
即効策を施したうえで、さらに細かな部分も改善していきましょう。
ファイル添付機能の導入
履歴書や職務経歴書のファイル添付に対応させましょう。
テキスト入力のみのフォームだと職歴等を一から書かせることになり大変ですが、PDF等で添付できれば応募者の入力負担を大きく減らせます。
添付可能なファイル形式(PDF, Wordなど)やサイズ上限を明記しておくと親切です。また「あとでメールで送付」などの選択肢を用意し、ファイル準備がすぐにできない応募者にも対応できるとなお良いでしょう。
- 添付可能なファイル形式(PDF, Wordなど)を明記
- サイズ上限を明記
- 「あとでメールで送付」などの選択肢を用意
入力内容確認ページも有効
応募者が入力内容を送信前に再確認できるよう、確認画面を用意するのも有効です。 入力ミスに本人が気づいて訂正できるためミス送信を防止できますし、誤字脱字のまま送信してしまう不安も和らぎます。
確認画面は海外のサービスでは省略されがちですが、日本のWebフォームではお馴染みであるため、このほうが親切な設計といえます。
Google Formでも問題はない
正直、企業オリジナルのフォームを作るのはコストも手間もかかるため、手軽に使えるフォームサービスの活用も検討しましょう。例えばGoogleフォームはGoogleアカウントさえあれば誰でも無料で使えるツールです。
管理や分析ツールが整っているので、意外と侮れません。ただし注意点もあります。たとえばGoogleフォームの自動返信メール機能は回答者がGmailアドレスの場合に限定されること、応募があった際の通知設定がデフォルトではオフになっていることなどです。また細かいデザイン調整やブランドイメージとの整合性が取りづらい点もあります。このあたりは使い方次第になるかと思います。
- 無料で簡単に作成可能
- 管理や分析ツールが整っている
- スマホ対応がデフォルトで優れている
- 自動返信はGmailアドレスのみ対応
- 通知設定はデフォルトでオフ
- 細かいデザイン調整が難しい
多様性を受け入れるエントリーフォームの準備
最近は、年齢・性別・国籍・障害の有無などバックグラウンドが様々な人々が等しく応募できるフォームを用意したいというご要望も増えています。ここでは、多様な応募者に配慮したフォーム設計のポイントを解説します。
アクセシビリティ対応(WCAG準拠)
アクセシビリティ(Webサイトを誰もが利用しやすいようにする取り組み)の世界標準に「WCAG」というガイドラインがあります。例えば、視覚障害のある方がスクリーンリーダーを使って情報を得られるようにフォームにラベルを適切に付ける、といったルールが定められています。
「そこまで必要?」と思うかもしれませんが、実際に文字が見えにくい方やマウスが使えない方も応募できます。こうした配慮は企業のイメージアップにも貢献します。
性別欄への配慮
性別欄を必須にしている企業は多いですが、本当に必要でしょうか。最近では、履歴書の性別欄を任意にしたり、性別を必須で尋ねない動きが広がっています。理由は「応募時に性別を明かしたくない人への配慮」です。
単純な内容で後から面接で確認できる内容は応募時点では省くことをおすすめします。
最重要:個人情報保護の明示を
最後に強調したいのが、応募フォーム上での個人情報保護に関する明示です。応募フォームでは氏名や連絡先・経歴といった重要な個人情報を収集しますから、個人情報の取り扱いは、応募者がフォームを敬遠する大きな理由のひとつです。「この企業、本当に安全管理してくれるの?」と不安に思われたら、入力されずに離脱してしまいます。以下のポイントを押さえて、応募者の信頼を得られるフォームにしましょう。 参考:
利用目的の明示
フォームの送信ボタン付近に、「ご記入いただいた個人情報は○○の目的以外では使用しません」といった利用目的の明示を入れます。例えば採用活動であれば「記載された個人情報は採用選考のためにのみ使用します」といった一文があると、応募者は安心しやすくなります。
プライバシーポリシーへの同意取得
自社のプライバシーポリシーページへのリンクを設置し、「プライバシーポリシーに同意の上で送信してください」というチェックボックスや同意ボタンを設けます。ポリシーページには、少なくとも「個人情報の利用目的」「第三者提供について」「開示請求等の連絡方法」の3点を明記しておく必要があります。応募フォーム上でそれらを確認・同意できる仕組みにして、チェックボックスをチェックしないと送信できないようにすれば、応募者に自然とポリシー確認と同意を促せます。
データ管理・セキュリティの配慮
応募フォームで取得した個人データの管理方法にも注意が必要です。送信された情報は暗号化(SSL/TLS)された経路で送受信するのはもちろん、社内でもアクセス権限を限定し厳重に保管してください。必要がなくなった応募者データは適切に廃棄・削除するなど、日本の個人情報保護法やGDPR等の規制にも則った運用を行いましょう。フォーム上には「提供いただいた情報は当社の個人情報保護方針に基づき適切に管理します」といった旨を記載し、応募者が安心できるようにします。
最適化したフォームのサンプル
プライバシーポリシー
1. 個人情報の利用目的
当社は、応募者の皆様からご提供いただいた個人情報を、以下の目的のみに利用いたします。
- 採用選考(書類選考、面接、適性検査等)のため
- 採用に関する各種連絡・情報提供のため
- 採用活動の改善・効率化を目的とした調査・分析のため(個人を特定しない統計情報として)
上記以外の目的で個人情報を利用する場合は、あらかじめご本人の同意を得た上で行います。
2. 個人情報の第三者提供について
当社は、以下の場合を除き、ご提供いただいた個人情報を第三者に提供することはありません。
- 法令に基づく場合
- 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
3. 個人情報の安全管理
当社は、個人情報の漏洩、滅失またはき損の防止その他の個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じます。個人情報の取り扱いを外部に委託する場合には、委託先に対して必要かつ適切な監督を行います。
4. 個人情報の開示・訂正・削除等について
当社は、ご本人から自己の個人情報についての開示、訂正、追加、削除、利用停止、消去および第三者への提供の停止(以下「開示等」といいます)の請求があった場合には、所定の手続きに基づき対応いたします。
開示等の請求を希望される場合は、下記の連絡先までお問い合わせください。
5. お問い合わせ先
当社の個人情報の取り扱いに関するお問い合わせは、下記までご連絡ください。
株式会社〇〇〇〇
個人情報保護管理者:総務部長
E-mail:privacy@example.co.jp
TEL:03-1234-5678(受付時間:平日9:00〜17:00)
6. プライバシーポリシーの改定
当社は、必要に応じて本ポリシーを改定することがあります。改定した場合は、当社ウェブサイトに掲載いたします。
制定日:2023年4月1日
最終改定日:2025年1月1日
まとめ
エントリーフォームの改善は、離脱率の高さに悩む企業にとって最優先で取り組むべき課題です。本記事で紹介したように、
- 必須項目の見直し(減らす・任意化する)
- モバイル最適化(レスポンシブ対応・UI改善)
- エラー表示の工夫(丁寧な入力支援とガイド)
- ファイル添付や確認ページの導入
- 自動返信メールの設定
- 多様性への配慮(アクセシビリティ・ジェンダー・多言語化)
- 個人情報保護の明示と徹底
まずは効果の出やすい部分から着手し、データ計測をしながら段階的にフォームを改善していきましょう。最初はシンプルにしておいて、あとから少しずつ拡張していくのも一手。アクセス解析や離脱率を見ながら改善を重ねると、確実に採用活動のパフォーマンスが上がります。
採用フォームは一度作って終わりではなく、常にユーザー(求職者)の反応を見て改善を重ねることが大切です。小さな改善の積み重ねで応募者のストレスが減り、応募完了率が上がれば、結果的に採用成功率の向上や採用コストの削減にもつながります。
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本記事では、採用サイトの重要性や最新のトレンドについてご紹介しました。
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